株の世界でもテーマになっている、量子コンピュータについて
以下のように3回に分けて記事にする予定です。
1回目:量子コンピュータの仕組み(今回)
2回目:主要プレイヤーの現状(Google、IBM、IonQなど)
3回目:量子耐性暗号(PQC)の動向と今後の予想
AIや創薬などの分野で計算の限界が見え始めている現在、
量子コンピュータは次のブレイクスルーとして注目されています。
※本記事は
「量子コンピュータ関連株を調べ始めたが、仕組みがよく分からない」
という方向けに、数式なしで整理しています。
それでは量子コンピュータの仕組みをざっくり説明します。
詳細に興味が出てきたら是非、専門書をご確認ください。
量子力学は古典物理学とは大きく異なる存在で、現代物理学と言われています。
※現在のコンピュータ(ノイマン型)は、古典物理学の法則で動作します。
■量子とは
粒子と波の性質をあわせ持った、とても小さな物質やエネルギーの単位のことです。
電子、光子、原子、分子などが「量子」として扱われます。
言い換えれば、私たちの世界は量子の集合体でできているとも言えます。
●量子状態の特徴(波動粒子二重性)
・波として広がり
・観測すると粒として確定する
■量子力学の不思議な2つの性質
量子コンピュータの仕組みを理解するうえで欠かせない、
「重ね合わせ」と「量子もつれ」 の2つを紹介します。
● 重ね合わせ(superposition)
量子は観測されるまで
・どの位置にいるか
・どの経路を通ったか
・どの状態にあるか
が 1つに決まっていません。
決まっていないというより、
複数の可能性が同時に存在している状態
これが「重ね合わせ」です。
※それぞれの可能性には「確率(重み)」があります。
観測すると、その瞬間に
重ね合わせが壊れて(波動関数の収縮)
確率に従って1つの結果に確定します。
※「波が粒に変身する」のではなく、
複数の可能性が1つに決まるという意味です。
イメージ
量子は本来、
Aの道もBの道も同時に進むぼんやりした存在。
しかし「どっちを通った?」と観測した瞬間、
ぼんやりが消えて、AかBのどちらかに決まる。
※量子状態の重ね合わせは、単なるあいまいではなく、
確率振幅という複素数の重ね合わせであり、
干渉によって結果の確率が変化します。
●量子もつれ(entanglement)
2つ以上の量子が、
どれだけ離れていても状態が一体化しているように振る舞う現象。
たとえば量子ビット A と B がもつれているとき:
・A を観測した瞬間
・B の状態も即座に決まる
しかも 距離に関係なく。
何光年離れていても同じ。
これは「情報が光速を超えて伝わる」という意味ではなく、
もともと2つが1つの量子状態として存在している
というのが量子力学の説明です。
※量子もつれは2つに限らず、3つ、4つ、100個と拡張できます。
(量子コンピュータではこれが重要)
※この現象はアインシュタインも
「不気味な遠隔作用(spooky action at a distance)」と呼び、
長年議論の的となってきました。
■量子コンピュータの仕組み
●量子ビット(qubit)とは
量子コンピューティングでデータを変換(エンコード)するために
使用される情報の基本単位です。
古典ビットは0と1の状態しかとれないことに対して
量子ビットは0と1と、その重ね合わせの状態を取れる。
●量子コンピュータの3ステップ
1. 重ね合わせを作る(Hゲート)
2. 量子ゲートで操作する(必要に応じてもつれを作る)
3. 観測して答えを取り出す
順番に見ていきましょう
1. 重ね合わせを作る(Hゲート)
計算の土台を作ります。
H(Hadamard)ゲートという量子ゲートを使って、
1つの量子ビットを「0」「1」
の両方が同時に存在する状態にします。
これが 重ね合わせ(superposition) です。
量子ビットに H ゲートをかけると
確率的に0と1の両方の可能性を持つ状態という、
量子特有の状態が作られます。
※量子ビットの状態は、操作によって確率の重みを調整できます
🌍物理的にはどうやって作るの?
量子ビットの種類によって方法は違いますが、
本質はどれも同じで、
量子状態にちょうどよい揺さぶりを与える
ことで重ね合わせが作られます。
✔ 超伝導量子ビット
→ マイクロ波パルスを当てて、
電子のエネルギー状態を「0と1の中間」にする。
✔ イオントラップ量子ビット
→ レーザー光を当てて、
イオンの内部状態を重ね合わせにする。
✔ 光子量子ビット
→ ビームスプリッタで光子を
「右に行く+左に行く」の重ね合わせにする。
どれも物理的には違うけれど、
数学的には Hゲートをかけているのと同じです。
2. 量子ゲートで操作する(必要に応じてもつれを作る)
ここで
量子もつれ
干渉
位相反転
などを使って、正解の確率を増やす。
🌍量子もつれは物理的にはどう作るの?
量子ビットの種類によって違いますが、
本質は「相互作用を起こして状態を結びつける」こと。
✔ 超伝導量子ビット
→ マイクロ波パルスで2つの回路を結合させる
✔ イオントラップ量子ビット
→ レーザーで2つのイオンの振動を共有させる
✔ 光子量子ビット
→ 非線形結晶でペアの光子を生成する(SPDC)
どれも数学的には CNOTゲートと同じ操作 を実現できます。
※CNOTゲートはもつれを作る代表的な手段の一つ
★補足
CNOTゲート解説
「制御ビットが1のときだけ、標的ビットを反転させる」ゲートです。
入力 出力
制御ビットが0、標的ビット0→制御ビットが0、標的ビット0
制御ビットが0、標的ビット1→制御ビットが0、標的ビット1
制御ビットが1、標的ビット0→制御ビットが1、標的ビット1
制御ビットが1、標的ビット1→制御ビットが1、標的ビット0
このCNOTゲートを『いかにエラーなく、多くのビット間で正確に行えるか』が、
現在GoogleやIBMが競っている技術の最前線です。
3. 観測して答えを取り出す
観測によって量子状態が収束し、確率に応じた1つの結果が得られる
※同じ計算を何度も繰り返して(「2.」の量子ゲート操作)、
統計的に正解を導き出すのが量子アルゴリズムの特徴です。
つまり、従来のPCが「1つずつ順番に」試行錯誤するのに対し、
量子PCは「全ての可能性を一度に」計算できるため、
特定の分野で数億倍のスピードが期待されているのです 。
■量子コンピュータの得意分野
● 組合せ最適化問題(例:配送ルート、ポートフォリオ最適化)
● 量子化学シミュレーション(例:新素材・新薬の開発)
● 機械学習の加速(量子機械学習)
● 暗号解読(Shorのアルゴリズムによる素因数分解)
個人的には、「機械学習の加速(量子機械学習)」に注目しています。
量子コンピュータがAIの学習や推論を効率化すれば、
エネルギー消費を抑えつつ、より高度な知能を実現できるかもしれません。
■不得意分野と課題
●日常的な計算処理(表計算、文書作成など)は不得意
●ノイズに弱く、エラー訂正が難しい
●大規模な量子ビットの安定動作がまだ困難
■まとめ
量子コンピュータは、「重ね合わせ」や「量子もつれ」といった
量子力学の不思議な性質を活用することで、
特定の計算を従来のコンピュータよりも圧倒的に高速に処理できる
可能性を秘めています。
まだ技術的な課題は多く残されていますが、
今後の計算技術に革命をもたらす存在として、世界中で注目が集まっています。
今回解説した「物理方式」の違いを踏まえながら、
次回Google・IBM・IonQなど主要プレイヤーの現状を整理します。

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