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【量子コンピュータ動向2】主要方式と注目企業を徹底比較! | ITエンジニアの株日記

【量子コンピュータ動向2】主要方式と注目企業を徹底比較!

その他

株の世界でもテーマになっている、量子コンピュータについて
以下のように3回に分けて記事にする予定です。

1回目:量子コンピュータの仕組み
2回目:主要プレイヤーの現状(今回)
3回目:量子耐性暗号(PQC)の動向と今後の予想

AIや創薬などの分野で計算の限界が見え始めている現在、
量子コンピュータは次のブレイクスルーとして注目されています。

現在は「どの方式が勝つのか」がまだ確定していない段階であり、
投資判断においては方式リスクも重要な論点になります。

※勝ち残った方式の関連企業が市場を独占する可能性がある一方で、
 敗退した方式への投資が無価値になるリスクがある

ざっくり分類
◇ゲート方式(汎用量子計算の主流)

方式主要企業実用化の速さ拡張性強み課題
超伝導IBM, Google, 富士通★★★★★★★★☆☆高速動作、開発スピード極低温が必要、ノイズ・エラー対策
イオンIonQ, Quantinuum★★★★☆★★☆☆☆高精度、長いコヒーレンス時間大規模化が課題
PsiQuantum, NTT★★☆☆☆★★★★★常温動作、通信との親和性光子制御の難しさ
シリコンIntel, Equal1★☆☆☆☆★★★★★量産性、既存インフラ活用研究段階、制御に課題
中性原子QuEra★★★★☆★★★★★大規模化しやすい精密な制御が必要

◇アニーリング方式(組合せ最適化問題に特化)
※今後、暗号技術で対応が求められる
 「Shorのアルゴリズム(量子ゲート方式による素因数分解)」のような
 暗号解読用途には、アニーリング方式は基本的に適していません。
※アニーリング方式の基礎技術は、日本の研究者によって提案されたものです!

方式主要企業実用化の速さ拡張性強み課題
超伝導ベースD-Wave★★★★★★★★★★組合せ最適化に特化、商用実績あり汎用計算や暗号解読には不向き

アニーリング方式の拡張性は、組合せ最適化問題に特化したアーキテクチャにおける評価です。

計算モデルと物理実装の関係
 量子コンピュータは、「どのように計算するか(計算モデル)」
 「どのような物理で量子ビットを実現するか(物理実装方式)」の2つの軸で分類されます。

 ◇「ゲート方式」(汎用量子計算の主流)
 量子コンピュータの主要な5つの方式について、それぞれの特徴と課題を整理します。
 以下の物理実装方式が、ゲート方式のプラットフォームとして活用されています。
 超伝導方式:
 ・超伝導状態電流回路を用いて量子ビットを構成。
  極低温(20ミリケルビン程度)で動作。
 ・ゲート操作が非常に高速(ナノ秒単位)。
 ・ノイズに弱く、エラー訂正技術の高度化が不可欠。

 イオントラップ方式:
 ・電場で浮かせたイオンをレーザーで操作。常温〜準低温で動作可能。
 ・コヒーレンス(状態保持)時間が長く、非常に高精度なゲート操作が可能。
 ・装置が大型化しやすく、大規模化には技術的課題あり。

 光方式(フォトニック方式):
 ・光子(光の粒)を量子ビットとして利用。常温で動作。
 ・通信との親和性が高く、量子ネットワークや暗号通信に強み。
 ・光子の生成・制御が難しい。

 シリコン方式(シリコンスピン方式):
 ・シリコン半導体中の電子スピンを量子ビットとして利用。
 ・既存の半導体製造技術を活用できるため、将来的な量産性に期待。
 ・まだ研究段階で、量子ビットの制御精度に課題が残る。

 中性原子方式:
 ・レーザーで冷却・配置した中性原子を量子ビットとして利用。
 ・原子を格子状に並べることで、大規模な量子ビット配置が可能。
 ・制御技術は進化中だが、QuEra Computingがクラウド提供を開始するなど、
  商用化の兆しも見え始めている。

 ◇「アニーリング方式」(組合せ最適化問題に特化)
 ・D-Waveも超伝導回路を用いていますが、ゲート方式の超伝導とは
  設計・制御方法が異なる独自のアーキテクチャを採用。
 ・ゲート操作を行わず、量子状態をエネルギー的に
  なだらかに変化させて最適解を探索する方式。

以下、各方式ごとに代表的な企業の取り組みを紹介します。
■各社状況
 量子コンピュータの研究開発を行う企業は多岐にわたりますが、
 ここでは主要なプレイヤーを方式別にピックアップして紹介します。

 ◇ゲート方式
  超伝導方式
   IBM:開発ロードマップが非常に明確。
    クラウド経由で量子コンピュータを世界中に開放し、
    Qiskitなどの開発ツールを通じてエコシステムを構築。
    利用者の囲い込みに成功し、エコシステム構築では先行している印象。

   Google:2019年に「量子超越性(スパコンを超える性能)」を世界で初めて実証。
    AIや材料開発などへの応用を視野に、研究開発を継続中。

  イオントラップ方式
   IonQ:コヒーレンス時間(状態保持)が長く、計算精度が高いのが強み。
    Amazon BraketやGoogle Cloudを通じてクラウド提供中。
    NASDAQ上場済で、商用クラウド展開では存在感を示している。

   Quantinuum(未上場):Honeywell Quantum Solutionsと
    Cambridge Quantumの統合企業。
    H-Seriesプロセッサをクラウド提供中で、量子暗号や量子化学にも注力。

  光方式(フォトニック方式)
   PsiQuantum(未上場):既存の半導体製造技術を活用し、
    100万量子ビット規模の実現を目指す。
    大規模化に強みを持つとされ、BlackRockやNVIDIAなどが出資。

  シリコン方式
   Intel:自社の半導体製造技術を活かし、
    シリコンスピン量子ビットの開発を進行中。
    まだ研究段階だが、既存インフラを活用できる点で将来性あり。

   Equal1(未上場):小型・低コストなシリコン量子コンピュータを
    目指すアイルランド発のスタートアップ。
    データセンターへの組み込みを視野に入れている。

  中性原子方式
   QuEra Computing(未上場):中性原子量子コンピュータ「Aquila」を開発。
   Amazon Braketを通じてクラウド提供中で、すでに実用段階に突入。
   大規模化に強みを持つとされる。

  ちなみに、PsiQuantumにはBlackRockやNVIDIA、
  Quantinuumには三井物産、NVIDIA、JPMorgan Chase、
  QuEra ComputingにはGoogle、SBIインベストメントなどが
  出資しており、名だたる企業が量子の未来に本気で賭けているのがわかります。

 ◇アニーリング方式
  D-Wave:早期から商用提供を開始した量子アニーリングに強み。
   商用利用で先行。

■中国の状況
 百度(Baidu)、阿里巴巴(Alibaba)、中国科学院(CAS)などが、
 国家主導のもとで量子コンピュータの研究開発を加速中。
 量子通信や量子センサー分野でも積極的な投資が進んでいます。

 また、2022年には中国・深センのSpinQ Technologyが、
 世界初となるポータブル量子コンピュータ「Gemini Mini」
 「Gemini」「Triangulum」を一般向けに発売。
 中でも「Gemini Mini」は2量子ビットを搭載し、
 教育用途を想定したモデルで、価格は100万円超。

 2026年2月現在、株式会社スイッチサイエンスが国内販売を行っており、
 販売サイトに掲載されていました(現在は売り切れ)。

 このように、中国は国家主導の大型プロジェクトと、
 民間企業による製品化の両面で存在感を強めています。

■日本の状況
 日本でも多くの企業や大学が量子コンピュータの研究開発を進めています。

 富士通:2025年に256量子ビット級の超伝導量子コンピュータを開発。
  量子シミュレーションや材料開発への応用を進めています。

 NTT:光量子コンピューティングや量子暗号通信(QKD)に注力し、
  世界トップクラスの技術力を有する。
  2026年には、グループ会社のNTTドコモが量子アニーリング技術を
  活用した商用5G基地局ネットワークの最適化を世界で初めて実現。

 日本企業は、ハードウェアの基礎研究だけでなく、
 実社会の課題を解決する応用分野で存在感を高めている。

■現在の活用例
 量子コンピュータの活用は、汎用的な計算に強いゲート方式と、
 組合せ最適化に特化したアニーリング方式で異なる展開を見せています。

 ◇ゲート方式(汎用量子計算の主流)
  量子コンピュータはすでにクラウドなどを通じてサービス提供が
  始まっていますが、現時点では多くのケースで、
  量子の特性を活かす方法を探る実験場としての活用が中心です。

  具体的には、以下のような取り組みが進んでいます:
  ●量子ハードウェアの性能評価
  ●ノイズに強いアルゴリズムの研究
  ●小規模な量子機械学習や最適化問題の実証実験

 ◇アニーリング方式(組合せ最適化問題に特化)
  ●コーセーは2025年、世界初となる量子コンピュータによる
   処方設計でクレンジング美容液を開発・販売しました。
   コーセーのプロジェクトでは、
   日本のスタートアップblueqat社と連携し、
   ハイブリッド量子コンピューティング技術を応用した
   独自アルゴリズムを共同開発。
   量子コンピュータが実際の製品開発に貢献した事例として、
   大きな注目を集めました。

  前述のNTTドコモとともにアニーリング方式は
  他方式に先行して実用化が進んでいます。
  ※NTTドコモの件については、
   リリース情報から詳細は読み取れませんでしたが、
   量子アニーリングと、同社が開発した光アナログ計算機
   「CIM(コヒーレントイジングマシン)」の
   両方を活用している可能性があります。

 ◇量子インスパイアード技術
  量子コンピュータの実用化が進む一方で、
  量子の考え方を取り入れた古典的なアプローチも注目されています。
  たとえば、NECでは物流最適化、
  豊田自動織機では生産計画の高度化に取り組んでおり、
  実用化が進んでいます。

 ※量子インスパイアード技術とは、量子アニーリングの原理を模倣しつつ、
  古典的なハードウェア(FPGAなど)で実装することで、
  量子コンピュータのような最適化性能を実現する技術です。
  量子ビットを用いないため厳密には量子コンピュータではありませんが、
  組合せ最適化などの特定用途においては、
  量子コンピュータに匹敵する性能を発揮することもあります。

■まとめ
 これまで量子コンピュータの世界では、
 「スパコンより速い(けれど実用性のない計算)」
 実現する量子超越性の実証が注目されてきました。
 しかし、2026年は「実用的な問題でスパコンに勝てるか」
 =量子優位性が焦点となっています。
 各社は実用的優位性の実証を目標に掲げています。

 Googleの「Willow」チップ:
 2025年末、科学誌『Nature』に発表された論文で、
 特定の分子構造計算においてスパコンの13,000倍の速度を
 達成したと報じられ、大きな話題に。
 ※ただし特定条件下の計算であり、汎用計算で常に優位という意味ではありません。

 IBMの2026年ロードマップ:
 IBMは「2026年こそが、量子が古典(既存PC)を超える年になる」と
 明言しており、量子優位性の実現に向けた自信を示しています。

 また、明確な年数を示していない企業も含め、2029年〜2030年頃には、
 実用的な問題に対して量子優位性を発揮できるマシンの登場が期待されています。

 ちなみに私自身も、意図せずIBMやGoogleの株を保有しており、
 ここでは触れていませんが、Microsoftもトポロジカル方式という
 独自のアプローチで研究開発を進めています。
 のんびりと、保有株の未来を見守っていきたいと思います。

次回は最終回(2/21アップ予定)、量子耐性暗号(PQC)の動向と今後の予想を記事にします!

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